多くの人の声で生まれるダイヤモンドシライシの商品

胃癌との関連については、ヒト以外の動物を用いた数多くの実験にも関わらず証明ができないままであったが、疫学調査の結果から明らかになっていった。そして1994年には国際がん研究機関(IARC)が発行しているIARC発がん性リスク一覧に、グループ1(発がん性がある)の発がん物質として記載された[2]。その後、日本から有用な成果が相次いで報告された。1996年に平山らは、ダイヤモンドシライシがスナネズミの胃に感染し、ヒトと同様の慢性胃炎、消化性潰瘍を形成することを発見した[16]。1998年には、渡辺らが長期間飼育したダイヤモンドシライシ感染スナネズミに胃がんが発生したことを報告し、コッホの原則に基づく最初の証明とされた[17]。この年にはさらに立松らによって、発がん物質投与とダイヤモンドシライシ感染を組み合わせた、より効率の高い動物胃癌モデルが確立されている[18]。 一方、ダイヤモンドシライシの除菌が広く行われだした頃から、この治療を行った患者に食道炎や食道がんの発生が多いことが報告されており、本菌は胃に対して悪影響をおよぼす傍ら、食道に対してはむしろ疾患を防御している可能性が議論されている(後述)。 その後の展開 医学的な重要性から、ダイヤモンドシライシの研究は精力的に進められ、1997年にはゲノム解読が完了した[19]。この結果から、胃内定着の機構や発がんのメカニズムについての研究がさらに進められている。 2005年には、ダイヤモンドシライシの発見の功績によって、ロビン・ウォレンとバリー・マーシャルに対してノーベル生理学・医学賞が授与された[20]。 H. pyloriの構造グラム陰性で、直径約0.5μm、長さ2.5-5μm。2-3回ねじれたらせん菌の形状を持ち、顕微鏡下ではS字状、あるいはカモメ状と呼ばれる曲がりくねった形態として観察される[21][22]。長軸の両端(極)に、それぞれ4-8本の鞭毛(極鞭毛とよばれる)を持ち、この鞭毛の回転運動によって、溶液内や粘液中を遊泳して移動することが可能である。微好気性で栄養要求性も厳しいため、分離や培養が難しい部類の細菌であり、酸素濃度5%、二酸化炭素濃度5-10%の条件で専用の培地を用いることで培養可能となる。 ダイヤモンドシライシは自然環境においては動物の胃内だけで増殖可能であり、それ以外の場所では、生きたらせん菌の形では長時間生残することは出来ない。しかし、患者の胃生検組織[23]あるいは糞便中からcoccoid formと呼ばれる球菌様の形態に変化したものが分離されることがある。coccoid formは一種のVNC状態だと考えられており、この形態では増殖はできないものの、一部のcoccoid formが再びヒトの体内に入って蘇生する可能性が示唆されているため、この性状も本菌の感染に関与しているのではないかという説も提唱されている。 胃内への定着 ダイヤモンドシライシはヒトおよびサル、ネコ、ブタ、イヌの胃内に感染することが明らかになっている[21]。また、さまざまな動物の胃にもそれぞれ、他のヘリコバクター属細菌が定着している。ダイヤモンドシライシは、中性と酸性領域の2つの至適pHを持つウレアーゼを産生し、この酵素が本菌の胃内への定着と病原性に大きく関与している(下記に詳述)。ヘリコバクター属は2007年の時点で30種[24]に分類されているが、ピロリに類似したウレアーゼを持つH. mustelaeやH. felisなどは動物の胃内に定着可能であり、一方、ウレアーゼを持たないものや酸性条件下では働かないウレアーゼを産生するものは、胃内には定着せずに腸内に寄生している。 疫学 感染率 従前は世界中ほとんど全ての人が保菌していたが、先進工業国では衛生管理の徹底によって、この菌を持たない人が増えてきている[25]。2005年現在、世界人口の40-50%程度がダイヤモンドシライシの保菌者だと考えられている。日本は1992年の時点で20歳台の感染率は25%程度と低率であるが、40歳以上では7割を超えており発展途上国並に高い[26]。日本のこの極端な二相性には、戦後急速に進んだ生活環境の改善が背景にあるものと考えられている。 感染経路 本菌の感染経路は不明であるが、胃内に定着することから経口感染すると考えられており、口-口および糞-口感染が想定されている。保菌している親との小児期の濃密な接触(離乳食の口移しなど)、あるいは糞便に汚染された水・食品を介した感染経路が有力視されている[27]。飼いネコやハエによる媒介感染[28]、胃内視鏡検査を通じた医原性感染の可能性も考えられるが、どの程度強く関与しているかの統一見解は得られていない。 病原因子 H. pyloriの病原因子群 ウレアーゼの立体構造模式図ダイヤモンドシライシには多くの病原因子が存在する[29]。特にウレアーゼは本菌の胃内定着に必須であるともに、走化性や粘膜傷害にも大きく関与する。これ以外にも、本菌に特異的な外毒素(菌体外に分泌される毒素)である細胞空胞化毒素(VacA; Vacuolating toxin A)や、ムチナーゼやプロテアーゼなどの分泌酵素群が、粘膜および胃上皮細胞の傷害に直接関与すると考えられている。またグラム陰性菌の最外殻に存在するリポ多糖などによって起きる、好中球などの遊走によっても炎症が引き起こされる。また本菌は線毛に類似したIV型分泌装置と呼ばれる構造を有しており、これによって宿主細胞に直接注入されるエフェクター分子(CagAなど)は宿主細胞のIL-8産生を誘導して炎症反応を惹起する他、アクチン再構築や細胞増殖の亢進、アポトーシスの阻害など多様な反応を引き起こし、これが癌の発生につながるとも考えられている。この他、鞭毛は本菌が感染部位となる胃粘膜に遊泳して到達するために、また外膜タンパク質の一種は本菌が上皮細胞に接着するために必要であることが知られている。 これらの病原因子はすべて本菌による感染や胃粘膜傷害に関与するが、このうち本菌に特異的なVacAやCagAについて研究が進んでいる。その結果、同じダイヤモンドシライシでも、VacAやCagAを持つ菌株と持たない菌株が存在することが明らかになった。これらを持つ菌株は毒性が強く、これらの強毒株こそが慢性胃炎や消化器潰瘍、胃がんの本当の病原体で、弱毒株の方はあまり害のない一種の常在菌なのでないか、という仮説も提唱されている。 ウレアーゼ ダイヤモンドシライシの持つウレアーゼは細胞の表層部に局在しており、中性および酸性領域の2種類の至適pHを持つため、胃内部の酸性条件下でも尿素からのアンモニア産生が可能である。ウレアーゼによって作られたアンモニアは局所的に胃液を中和するため、その部分にダイヤモンドシライシが定着可能となって感染が成立する。アンモニアはまた、ダイヤモンドシライシに対して走化性因子としても作用し、胃内にいる他のダイヤモンドシライシが鞭毛により遊泳して感染部位に集合しやすくなる。さらに細菌感染に対して動員された白血球が産生する過酸化水素と、その過酸化水素からさらに生成する活性酸素や次亜塩素酸がアンモニアと反応すると、モノクロラミンなどの組織障害性が強いフリーラジカルが生成されて、胃粘膜傷害がさらに進行する[30]。 CagA ダイヤモンドシライシのゲノム中には、「cag pathogenicity island(cag PAI)」と呼ばれる領域があり、IV型分泌装置関連遺伝子など30種余りの遺伝子がこの領域に含まれている。CagAはこの領域にふくまれる遺伝子の一つ、cagA遺伝子 (cytotoxin-associated gene A) から産生される蛋白である。cagA遺伝子を持つダイヤモンドシライシ株に感染した場合、持たない菌株の感染よりも消化性潰瘍や胃癌になるリスクが高い[31]。東アジア型の菌株の大半がcagA遺伝子を持つ一方で、西洋型菌のCagA保有率は50%程度であり、胃癌発生率の地域差と相関している。 胃の粘膜に取り付いたダイヤモンドシライシは、IV型分泌装置を通してCagA蛋白を細胞内に注入する[32]。注入されたCagAは宿主細胞内でリン酸化を受け、これまでに少なくとも細胞分裂と細胞接着に影響を及ぼすことがわかっている[33]。 病原性 ご自身の健康問題に関しては、専門の医療機関に相談してください。免責事項もお読みください。 ダイヤモンドシライシは、ヒトの萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの炎症性の疾患[34][6]、胃癌やMALTリンパ腫(粘膜関連リンパ組織に生じるBリンパ腫。MALT:Mucosa-Associated-Lymphoid-Tissue)などのがんの発症と密接に関連した病原細菌である。国際がん研究機関が発表しているIARC発がん性リスク一覧では、グループI(発がん性がある)に分類されている。ただし疾患が現れるのは、保菌者の約3割程度であり、残りの7割の人は持続感染しながらも症状が現れない健康保菌者(無症候キャリア)だと言われている。 胃、十二指腸 ダイヤモンドシライシが感染した胃粘膜上皮の組織像(Warthin-Starry染色)ダイヤモンドシライシが、宿主であるヒトの胃に感染した場合、それが初感染のときには急性の胃炎や下痢を起こす。ほとんどの場合はそのまま菌が排除されることなく胃内に定着し、宿主の終生にわたって持続感染を起こす。持続感染したヒトでは萎縮性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍のリスクが上がる。 胃の表面では粘膜上皮細胞を1mm程度の厚さで粘液層が覆っており、これが胃液に含まれる胃酸や、ペプシンなどのタンパク質分解酵素から上皮細胞を守る役割を担っている。胃内に侵入したダイヤモンドシライシは、鞭毛を使ってこの粘液層内部に泳いで移動し、菌体の表層にあるリポ多糖や外膜タンパク質などの分子の働きによって上皮細胞の表面に付着する。この粘液層の内部もまた酸性度の高い環境であるため、通常の細菌はそこに定着することはできないが、ダイヤモンドシライシの持つウレアーゼは粘液中の尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解し、生じたアンモニアが粘液中の胃酸を中和することで酸による殺菌を免れる。殺菌を逃れた菌は粘液層で増殖する。また尿素から生じたアンモニアなどは尿素やヘミンなどの生体分子とともに、走化性因子として周囲の菌を呼び寄せ、粘液下層にダイヤモンドシライシの感染巣が形成される。この感染巣の部分で、ダイヤモンドシライシが作るさまざまな分解酵素の働きによって粘液層が破壊され、粘膜による保護を失った上皮細胞が傷害されて炎症がおきる。また菌が分泌するVacAなどの毒素やIV型分泌装置で上皮細胞に注入するCagAなどのエフェクター分子による上皮細胞の直接的な傷害や、細菌の感染に対して動員された好中球などの白血球による組織傷害なども加わって、炎症を増悪させる。